2008年12月9日火曜日

「ラースと、その彼女」

「ラースと、その彼女」を観てきました。



「いい人」だけれど、シャイで奥手な主人公のラース。そんなラースが突然、リアルドールのビアンカを「彼女」として周囲に紹介!周りの人たちは大いに困惑しながらも、ラースを傷つけないように優しく話を合わせていきます。

素朴なラースとは対照的に、胸やら唇やらがぽってりしてなんとも肉厚的で、セクシーな衣装に身を包むビアンカの姿がおかしかったり、切なかったり……。突拍子もない設定をみんなが受け入れ、ビアンカを通じてラースが生身の人たちと次第に交流を深めていく様子や、ラースに対する家族の愛情にホロリとしたのでした。

映画館の入口には“彼女”のビアンカがいたので、隣に座って記念撮影をしてきましたが、小顔でスタイルも抜群のビアンカがなんだかとても生々しくて、妙にドキドキしました。


2008年10月12日日曜日

「Nightsongs」

この夏、ライブに行ったりフェスに行ったりしながらも、合間を見てコツコツと聴き続けていたSTARS。出会いから2ヶ月にして改めて思うけれど、なんとも素晴らしいバンドです!



初めてSTARSを聴いたのは、職場の先輩から借りた「Nightsongs

本でも読みながら聴くか、とプレイボタンを押してから1分後には、本を閉じ、身動きできずに全曲聴き入りました。伸びやかなボーカルの歌声と繊細なメロディーがたまらなくツボで、すぐに他のアルバムもすべて購入。

聴いていると無性にセンチメンタルな気分になってくる楽曲ばかりで、秋から冬にかけて、じっくり聴いていきたいバンドです。

2008年9月8日月曜日

京都音楽博覧会 2008

RSRから3週間。京都おんぱくに備えて予習をしなければと思ってはいたものの、なんだか予習より復習をしたい気分でサニーデイ・サービスばかり聴いておりました。当日の新幹線で聴けばいいかと甘く考えておりましたが、新横浜から乗り込んで、目が覚めたら、おこしやす京都。今年のおんぱくは、カメラを忘れ、洋服を忘れ、タオルを忘れ、予習さえも忘れた……。前日の天気予報によると降水確率60%だったのでレインコートは新調しましたが、当日はなんとも良い天気。防寒対策ばかり考えて、日焼け止めもすっかり忘れてしまいました。。

炎天下にほろ酔い加減で芝生に座ってハンバート ハンバート、アシャ、Lana&Flipと聴く。アシャは初めて聴いたけれど、なんとも素敵!見た目からしてR&Bっぽいのをイメージしていたのだけれど、実際はもっと落ち着いてる系。耳に優しく、懐かしい音楽。きっとブルーノートみたいな場所で静かに聴いても素敵なのだろうけれど、歌いながら登場しちゃうようなアシャのキャラクターを十分に楽しめるから、やっぱり野外フェスってすばらしい。

続いて、暑い中ご登場の細野晴臣&ワールドシャイネス。タオルで無造作に顔をごしごし拭いたりして、大御所細野さんはなんとも自然体。己の予習不十分感は否めなかったけれど、生で細野さんが歌っているのを見れただけで、もう大満足。静かに聴き入りました。それにしても、おんぱく参加者のほとんどは20代のように見えたけれど、そんな若者たちにも支持される細野さんてすごいなぁ。

大工さんのセッションを抜けて、アイスなどを食べたりしていたところで大粒の雨!そこで参加者が一斉にレインコートを着始めたのには、驚き。おんぱくはリピーターが多いのかしら。みんな、去年の大雨で痛い思いをしたのでしょう…


そんな雨も10分程度ですぐに止み、待ってました、大御所・小田和正!「たしかなこと」「ラブストーリーは突然に」と続き、そろそろ出てくるかな、と思ったところで、くるり登場。そして一緒に「ハイウェイ」。なんと素敵なセットリスト!ぐっときました…
。そして最後「今日もどこかで」。よい曲でした。泣けました。おんぱくDVDが出るなら買います。

さて本腰入れていきますか、とステージ前方へ移動して、rei harakami。実は、ステージで地味に機材をいじってるハラカミさんを見ていても別段おもしろくないのでは?と思っていましたが、そんなことはまったくなく、良い意味で予想を裏切られました。ハラカミさんはリズムそのもの!機材の上のペットボトルを取る、水を飲む、置く、タオルを取る、汗を拭く、置く…
。一連の動作のすべてが自然に音に乗っているのです。もちろん私たちも自然と音楽に身を任せて、楽しく踊れました。音楽は頭で考えるのではなくて、身体で感じるものだなぁと実感。

スウェーデンのアカペラグループ、The Real Groupで心を洗われた後、〆のくるり。この2ヶ月でくるりのライブを聴くのは3回目でしたが、おんぱくでのくるりはずば抜けてすばらしかった!何がすばらしいかって、まずメンバーがすごい!ステージ右手にバイオリン持っているのはハンバート ハンバートの佐藤良成さんですから!


「夕日、きれいやなー」と言いながら、まずは「ブレーメン」「飴色の部屋」。2曲ともデラぜっぴんでもライジングでも聴いたけれど、全然音が違います。もちろんアコースティックバージョンだから違うのは当たり前ではあるのですが。ライブで初めて聴く「京都の大学生」と、「学生時代は賀茂川をふらふらしてばかりいました・・・賀茂川の歌を歌います」というMCに続けて、「リバー」。リバーが賀茂川の歌だったなんて、初めて知りました。「さよならリグレット」「真昼の人魚」と新曲が続き、しっとりと「ばらの花」「宿はなし」。

行くまでは、今年はRSRもあるしライブも行くしと、おんぱくへの参加を迷っていましたが、くるりのこのステージが聴けて、本当に京都へ来てよかった。岸田くんがですね、非常に楽しそうに歌っているのが感じられて、なんというか、その姿を見れただけで幸せな気分になりました。

私はくるりのファンですが、実はあまり好きではない楽曲もけっこうあります。アルバムの当たり外れの大きさも、たびたび感じます。そういう冷静な視点を持つことがほかのアーティストへの興味につながるとも思ってきたし、自分の音楽の幅を広げてくれるのだと信じてきました。でも、今日はちょっと、一瞬、くるりを喜ばせるためにおんぱく来ているかのような錯覚に陥り、くるりが歌うのならば何でも好き!みたいな盲目的なくるり愛に目覚めました。新しい感覚でした。

アンコールの拍手が鳴り止まない中、戻ってきたくるり…
と細野晴臣!!!サプライズ!!どよめく会場に、してやったり顔のくるりの二人。そして一緒に、はっぴいえんどの名曲「風をあつめて」。学生時代に、よくMDで聴きながら通学してたなぁ。まさか本物を聴けるとは思っていなかったので、なんとも感慨深かったです

翌日はみんなで銀閣寺と哲学の道に行き、途中、弁天様(音楽の神様)で「来年もおんぱく来れますように!」としっかりお祈りしておいたのでした。

2008年8月30日土曜日

「ONCE ダブリンの街角で」

ONCE ダブリンの街角で」を観ました。



低予算感を隠さない極めて地味なキャスティングでしたが、それだけに素朴なストーリーが際立ち、心に染み入りました。

主人公演じるアイリッシュ・ロックバンドThe framesのボーカル、グレン・ハンサードが大変なる犬顔!普通にしていても哀愁漂います。ストリートミュージシャン役なんて言ったら、たいていは10代か20代のキャスティングとなりそうなところですが、グレンはどう見ても30代で、それだけに「この年になってもストリートミュージシャンかぁ…そりゃ、女にも逃げられるだろうな」という現実味が出ていました。他に出てくるストリートミュージシャンたちもかっこよくて、ダブリンに行ってみたくなったのでした。

とにかく、音楽が素晴らしい。切ないまでの喪失感が歌われるあたりとか、もう、画面にくぎづけです。心を打ちます。

2008年8月26日火曜日

RISING SUN ROCK FESTIVAL 2008

RSR2008 in Ezoに行ってきました。

初日は雨で、最高気温が20度という夏とは思えない寒さ。歯をカチカチ鳴らしながらテントを張り、やっと雨がしのげる部屋ができたときの嬉しさと言ったら!夏フェスにお決まりのカキ氷もビールも手を出したい気分になれず、食べたのは温かい味噌ラーメンばかり…。でも、今まで参加したフェスの中で、文句なしに一番楽しかった!




2008.8.15 ~The 1st day~

●くるり
初めてのテント設営に思いのほか手間取ってしまい、無事に荷物をテントにしまい込んだ頃には、なんだかすでに昼寝したい気分に…
…。朝も5時起きしていますからね…。そんなわけで、巣作りに満足してしまい、とろとろ歩きながら遠く離れたテントサイトから会場に戻っていたところ、会場内から「ワンダーフォーゲル」が!一気に目が覚めた気分で、ステージまで駆け足。「さよならリグレット」など新曲3曲も十分楽しめたし、なかなかよい出だしです。

●矢野顕子
遠くレミオロメンを聴きながら味噌ラーメンで腹ごしらえをして、次に向かう先は残り数曲になった矢野顕子さん。こじんまりしたピアノの発表会のようなステージに、美しい矢野さんの音色。申し訳ないことですが、なんだかすっかり気持ちよくなり、立ったまま眠くなってしまったのでした。

●鼠先輩
ステージ間を移動している間にたまたま見かけた鼠先輩。意外にも、歌がお上手でした。客席まで降りてきて盛り上げてくれるあたり、さすが芸人。見る気はなかったのに、ついつい立ち止まって笑わされてしまいました。

●曽我部恵一ランデヴーバンド
明日2日目のサニーデイも楽しみだけれど、まずはここから。雨も小雨になり、夕暮れ時に美しい曽我部さんの歌声というシチュエーションに酔ったのもあるかもしれないけれど、とにかく、今まで見た曽我部恵一バンドのライブの中でも、とびぬけて良かった!「あれ、曽我部さんてこんなにきれいな声をしていたんだっけ?」と思ってしまうほど音響もよく、コアファンだけに囲まれている感じのこじんまりしたステージで、曽我部さんの表情まで読み取れる距離もすばらしかった。「日に日にメンバーが増えてる曽我部恵一ランデヴーバンドです」という紹介から「好きな女の子に電話をしたくなってきた」という曲フリ、加山雄三のカバーもすべてナイス!このステージを聴けただけで北海道に来た甲斐があったなぁといたく感動したのでした。

●スチャダラパー
予想通りの楽しいステージ!「今夜はブギーバック」が流れたときには、思わず興奮してワーッと前に走って行ってしまいました。普段ライブに行くことのないスチャダラのようなステージを聴くと、あぁフェスに来たんだなぁという実感が湧いてきたのでした。

●電気グルーヴ
菊池成孔ダブ・セクステットを聴く予定でしたが、日が沈んで寒くなってきたので踊れる方へと自然と足が…
。初めての電グルでしたが、非常に楽しかった!「ママケーキ」とか、正直、よくわからないものもありましたが、とにかくぴょんぴょん飛び跳ねて、最後の方には足がつらくてジャンプできなくなったほど。
ちなみにこのライブがとても楽しかったので、帰宅してからTSUTAYAでアルバム借りて家で聴いてみましたが、どうもイマイチ。やはり家ではフェスは再現できず。

まだトリのKEN YOKOYAMAさんが残っていましたが、疲労困憊のためテント戻って爆睡。


2008.8.16 ~The 2nd day~

前日の寒い雨に比べたら、なんていい天気!寒いけれど、晴れています!

●怒髪天
ガガガSPへ行くという友人(23)のことを若いなぁと感心しつつ、怒髪天へ。ステージに広がるふんどし姿の男たち。気合十分。しかし、どうにもこうにも低血圧な私はイマイチ盛り上がれず、1曲だけ聴いたらビールを飲みに抜け出す。フードコート隣のガガガでは、テントが大きくタテ揺れ。終わったら大汗をかいた集団が大量に出てきて、先を争ってポカリを買っていました。アーステントの横にポカリスエットって、完璧に計算されているなぁと感じた瞬間でした。

●元ちとせ
BEAT CRUSADERSを聴く予定でしたが、夜に備えて一旦テントに戻って昼寝。2時間寝てスッキリ。勝手にしやがれを聴きに行くつもりが、ボヘミアンガーデンが思いのほか遠く、途中のグリーンオアシスで元ちとせを聴く。みんな座って静かに聴いていました。なんとも聴かせる、美しい歌声でした。今頃サンステージではザ・クロマニヨンズが大騒ぎしているんだろうなぁ、みんなペットボトルとか放り投げているんだろうなぁ、あそことは流れている時間が違うなぁと思いつつ…


●Mr.Children
中学生のころから聴いているミスチル。
ステージの端から桜井さんが現れたときのかっこよさと言ったら!一緒に小林武史も出てきて、それはそれでサプライズだったけれど、そんなサプライズになかなか気付けないほど桜井さんに目が釘づけ!本当にかっこよかったです。欲を言えば、比較的最近の楽曲が続いたので、1つくらい昔のをやってほしかったな。

●椎名林檎
いよいよ本格的に夜になり、寒さも倍増。花火を見ながら寒さに震えていたら、先ほどステージが遠いから諦めた勝手にしやがれの斉藤さんに偶然お会いする。あぁ、聴きに行っておけばよかった。そうしたら「すごくステキでした」とか言えたのに・・・と猛省。椎名林檎は事変ばりに騒げるかと思いきや、予想に反してアコースティックライブ。満月がぽっかり浮かび、なんとも幻想的なステージに、白い衣装の椎名林檎と弦楽四重奏。美しい。あぁ、こういう人もいるんだなぁ。でも、最後の方はちょっと食傷気味だったかな。

●ZAZEN BOYS
なぜかかなり前方に陣取ってしまったザゼン。「ザゼンでこんな前の方で聴いてたら死ぬ!」という友人の心配もよそに、かなりアダルトなステージ。ザゼンのライブが初めての私は、なんか拍子抜け。

●ゆらゆら帝国
楽しく朝日を拝むために一旦テントサイトに戻って、テントをたたむ。・・・が、予想外に手間取ってしまい、ゆらゆらを見逃す!なんてこった!この2日間で一番ショックだったのが、ゆらゆらを聴けなかったことなのでした。東京に戻ったらライブ行こうと胸に誓いました。無念です。

●サニーデイ・サービス
サニーデイが始まるのは夜中の3時から。半袖Tシャツの上から長袖を2枚を重ね着してもまだ寒い蝦夷の夜。ひたすら味噌ラーメンと焼酎お湯割りで暖をとりながら、サニーデイの登場を待ちました。ほろ酔いの中、ようやく曽我部さんが登場したときには、なんだかものすごくホッとしたものです。やっと3時になった、もうすぐ日が明けて暖かくなるんだ、と。
「baby blue」「恋に落ちたら」の後、「ご無沙汰しております、サニーデイ・サービスです」のご挨拶。素朴だー。「まったく変わってないね」とかなんとか言っていたけど、曽我部さん、すごく太りましたけどね!前日のランデヴーバンドとはまたちょっと違うトーンで淡々と進み、「サマー・ソルジャー」まで王道が続いてすっかり温かい気分に浸ったところで、「もう1曲やってもいいですか?」で「コーヒーと恋愛」。ちょうど前日に「東京」を聴いたこともあり、嬉しい気分になってステージ終了。うーん、すばらしい、いいライブでした!寒い思いをしても北海道に来てよかった!

●東京スカパラダイスオーケストラ
いよいよ空もうっすら明るくなりつつあり、あぁライジングサンだなぁなんて思っているところで、大トリのスカパラ登場。直前まで飲んでいた焼酎でいい気分になっていたこともあり、楽しく踊りまくりました。一人でも十分楽しいスカパラ!途中、伊藤ふみおが登場してからは、周りが飛び跳ねすぎてステージ見えず。それでも十分楽しいスカパラ!




こうして、「楽しい!」を連発している間に3日目の朝日を迎えていたのでした。早くも、来年はどのフェスに行こうかなぁとワクワクしています。

2008年8月14日木曜日

サマー・ソルジャー

ライブに行ってみたいアーティストを挙げるとしたら、1番目はビートルズ。そして、何番目かに必ず挙げるのがサニーデイ・サービスでした。でも、私が大学時代に初めてサニーデイを聴いたときにはすでに彼らは解散しており、当時は自分の出遅れ感を呪ったものです。

だから、今年のライジング・サン ロックフェスティバル’08でサニーデイ・サービス再結成のニュースを耳にしたときには、文字通り飛び上がって喜びました。

明日から、待ちに待ったRSR in蝦夷。

ロックインジャパンやフジロックなど夏フェスには何度か参加していますが、実はキャンプ泊は初体験。天気も悪いというし、この時期の北海道の夜はテントで寝るには寒すぎると聞きますが、そんなことはまったく気にならないくらいに、今はサニーデイを聴けることが楽しみで仕方ありません。

筋金入りのバックパッカーの夫から借りたゴツいリュックを背負って、楽しんできます!

2008年8月9日土曜日

ぼんぼり祭り

鶴岡八幡宮で開催中のぼんぼり祭りへ行ってきました。鎌倉在住の著名人が描いた書画をぼんぼりに仕立てたこのお祭りは、風情があって、大好きな夏の鎌倉のイベントです。

養老孟司さん、松岡正剛さん、岡田武史さん、
朝丘雪路さん、竹中直人さん……。鎌倉在住の著名人て、たくさんいらっしゃるのですね。私の一番のお目当ては、もちろん庵野秀明&安野モヨコ夫婦!オチビサン、大好きです。




2008年5月23日金曜日

『ペット・サウンズ』

ペット・サウンズ』ジム・フシーリ著/村上春樹訳

ビーチ・ボーイズの「ペット・サウンズ」は、ロックの歴史を変えた文句なしの名盤。本作は、一人のファンが書き上げた、ビーチ・ボーイズのリーダーであるブライアン・ウィルソンに対する編愛に満ちたお話です。

正直、ビーチ・ボーイズファンにとって耳の痛い話、聞きたくない話も多く、音楽性とは別のところでアーティストを批評されたくないと感じる部分も多々あります。

でも、それを補って余りある訳者のあとがきのすばらしさ。著者に負けないほどのペット・サウンズファンである訳者村上氏が、丁寧な言葉選びで解説してくれるのは、なんとも贅沢。
「世の中には二種類の人間がいる。“ペット・サウンズ”を好きな人と、好きじゃない人だ。」
ペット・サウンズと村上春樹が大好きな人は、この訳者あとがきを読むためだけに買っても後悔しないはず。

『ティファニーで朝食を』

ティファニーで朝食を』トルーマン・カポーティ著/村上春樹訳


大好きなカポーティの名作を、村上春樹さんが翻訳!なんともうれしい話です。


村上訳の特徴は、多くの書評でも指摘されている通り、「いつの日か目覚めて、ティファニーで朝ごはんを食べるときにも、この自分のままでいたいの」という、この「朝ごはん」にあります。朝ごはん。満ち足りた生活が目に浮かぶ、温かい響きですよね。

さて、「ティファニーで朝食を」といえば映画の影響もあり、私にとってはオードリー・ヘップバーンにムーン・リバーにイメージされる、良くも悪くもオールド・ニューヨーク的であったですが、村上訳の本書を読んでいて目に浮かぶのは、近代的なニューヨーク・シティ。まったく別の作品を読んでいるかのように、驚くほど想像豊かに新しい気分で楽しむことができました。

『調べる技術・書く技術』

調べる技術・書く技術』野村進著


この4月から部署が異動になり、編集という初めての仕事を担当することになりました。文章を読むのは好きですが、自分で長い文章を書いたり、人の書いた文章に手を入れたりするのはなかなか難しく、悪戦苦闘の毎日です。そこで、まずは書く技術を身につけようと買ってみた、『調べる技術・核技術』。期待以上のおもしろさでした!

著者はノンフィクション作家の野村進氏。「フォームを身につける」ことの重要性を何度も唱えています。紹介されているいくつかのフォームの中でも特に興味深いのが、“ペン・シャープナー”についての記述。すなわち、書く前に鉛筆を削って準備を整えるように、「文章のカンを鈍らせないために、書く前にお気に入りの文章読む」ことが大切だというものです。

毎日のように「なんだか書く気が起きないな」と逃げがちな私にとって、筆者のこの文章こそがペン・シャープナーになったのでした。

「幸せになるための27のドレス」

結婚式を来月に控え、仕事に式の準備に慌ただしい毎日を送っています。自分の結婚式なのだからとても楽しみではあるのですが、なかなか疲れることも多く、なんかこう、気分がパッと明るくなるラブコメを観たくなり、「幸せになるための27のドレス」を観てきました。


主人公のジェーン演じるキャサリン・ハイグルがお節介なおばさん顔(失礼!)で、なんとも役にぴったり!

たくさんのウェディングドレスと花嫁付添人のドレスはとても華やかで飽きずに見れたし、美人で要領のいい妹に好きな人を奪われてしまったり、最初は嫌いだった新聞記者と恋に落ちたりと、まさにラブコメの王道をいくストーリーで、期待通りの楽しく明るい映画でした。



2008年3月24日月曜日

『ぼくは散歩と雑学が好きだった。小西康陽のコラム1993-2008』

初めてジョアン・ジルベルトが演奏するアントニオ・カルロス・ジョビン「三月の水」を聴いたとき、あぁまさに3月の水って感じだな、と思ったものです。富士山の麓に生まれ育った私の脳裏には、春の訪れとともに富士山の白い雪が徐々に透明のみぞれ状になり、溶けて水となって川に流れ出す音、そして町中の川の水の勢いが増していく光景が自然と思い浮かんだのですが、「ぼくは散歩と雑学が好きだった。-小西康陽のコラム1993-2008」を読んで初めて、ブラジルにおける3月は夏の終わる季節で、これは秋の訪れを描いた名曲なのだということを初めて知りました。全然違った……。

小西さんの15年間のコラムやインタビューをまとめた本書は、一気に読みたい本というよりは、お気に入りのカフェで、あるいは寝る前にワイン片手に、時間に余裕があるときに少しずつ読み進めたい、大人の趣の本です。
ピチカートファイブ時代も現在も、話すのは古いレコードのことばかり。15年経っても新しいというか、15年経っても古い。ぶれない人生を送ってるなぁと心底感服します。

2008年2月26日火曜日

「Philharmonic or die」

「Philharmonic or die」 くるり



びっくりするようなタイトルのアルバム。

感想としては、これは、なんというか……ライブ盤です。

もちろん、ライブ盤であることは買う前からわかっていたのですが、聴いてみたら想像以上にライブ盤だったのです。このアルバムから聴こえてくるのは、前作「ワルツを踊れ」を聴いたときに肌で感じとったような「音楽について真剣に考えた感じ」「丁寧に作り込んだ感じ」「良いアルバムを作ろうという熱意」みたいなものではなく、だからといって一般的なライブ盤のように、会場の熱気やライブの臨場感を打ち出しているわけでもなく、意地の悪い言い方をするのであれば、「良いライブだったから音として残しておきたい」といった類の商売性や、アーティストの自己満足さでしょうか。

私は、アルバムを聴きながら「たぶんここの出だしで音を合わせるのにすごく練習しただろうな」とか、「ここのフレーズ、ギターが何度もミスして仲間うちでイライラしただろうな」みたいなものを想像するのが大好きです。制作の、ものづくりの過程が好きなのね。だから、臨場感のあるライブ盤よりは、スタジオで作りこまれたアルバムの方が好きで、ライブ盤ならばCDよりDVDを買う派です。そんなこともあって、少々消化不良感を持ったのも事実。

とはいえ、これはライブ音源を楽しむCDですね。自宅でくるりのライブが再現できるなんて、なんとも楽しいことですからね。