2008年3月24日月曜日

『ぼくは散歩と雑学が好きだった。小西康陽のコラム1993-2008』

初めてジョアン・ジルベルトが演奏するアントニオ・カルロス・ジョビン「三月の水」を聴いたとき、あぁまさに3月の水って感じだな、と思ったものです。富士山の麓に生まれ育った私の脳裏には、春の訪れとともに富士山の白い雪が徐々に透明のみぞれ状になり、溶けて水となって川に流れ出す音、そして町中の川の水の勢いが増していく光景が自然と思い浮かんだのですが、「ぼくは散歩と雑学が好きだった。-小西康陽のコラム1993-2008」を読んで初めて、ブラジルにおける3月は夏の終わる季節で、これは秋の訪れを描いた名曲なのだということを初めて知りました。全然違った……。

小西さんの15年間のコラムやインタビューをまとめた本書は、一気に読みたい本というよりは、お気に入りのカフェで、あるいは寝る前にワイン片手に、時間に余裕があるときに少しずつ読み進めたい、大人の趣の本です。
ピチカートファイブ時代も現在も、話すのは古いレコードのことばかり。15年経っても新しいというか、15年経っても古い。ぶれない人生を送ってるなぁと心底感服します。