「サウルの息子」を観ました。
アウシュヴィッツ強制収容所で、ゾンダーコマンド(強制収容所内の囚人による労務部隊)の一員として死体処理をしていたハンガリー人のサウルは、ガス室で殺されたユダヤ人の中に少年の死体を見つけ、彼にユダヤ教に則った埋葬を施そうとして奔走します。
……なんとも腹にずしんと響く、重い映画でした。
囚人たちが、直視できないほどの過酷な環境の中で生きていることが強く伝わってくる、狭い視野とぼやけた背景。美しい色や笑顔や歌声は何一つ映らず、目をそむけたくなるものばかりが目に入ってきます。
なによりも、この映画が実際にゾンダーコマンドたちが残した手記に基づく話だということが恐ろしい。
はじめは、なぜサウルがそこまで「息子」にこだわるのか、よくわからなかったんです。
でも、数時間後の未来でさえ予測できない現実の中で、死体とはいえ、少年に愛情を注ぐことや、少年の「復活」のためにきちんと埋葬してあげることが、サウルなりの夢や希望につながるものだったのかもしれない。
ずっと無表情だったサウルが笑顔を見せる最後のシーンに、そんな風に感じました。
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