『爪と目』 藤野可織
登場人物の心理描写は削り取られ、淡々と事実や行動だけが記されていく本作。
時折交わされる会話から察しても、登場人物たちは総じて他人に対する興味関心が乏しく、人間関係への執着心が薄い。すなわち、どの登場人物も読み手にとっては「何考えてるのかよくわかんない人」状態で、感情移入どころではありません。
そんなわけで、読み手と登場人物の距離がいまいち縮まらない感を抱えながら読み進めていくのだけれど、最後に幼い「私」がとる嵐のような動きに、驚きつつもホッと胸をなでおろし、そして、いつの間にか物語に引き込まれていた自分に気づくという、なかなか面白い体験をしました。
爪も目も、女にとっての色気パーツですから、こういう作品は女流作家ならではでしょうね。
0 件のコメント:
コメントを投稿
注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。