『共喰い』田中慎弥
女流が続いた反動か、ものすごく男臭いものを手に取ってしまいました。
どぶ川の臭いが今にも漂ってきそうなほど、描写がリアルで生々しい短編集。最悪なことに、つわりがピークの時期に読んだので、何度もこみ上げる胃酸と格闘しながら立ち向かいました。ちょうど、切迫流産で絶対安静の入院中、これしか読む本がなく、途中でやめることもできずに。
どちらかというと平凡な、田舎の何気ない日常を描いているのに、なんとなくそわそわして、何かに追われているような、漠然とした不安に襲われながらページをめくると、最後に息を呑む展開。
読後感は決してさわやかではないけれど、物語はいつまでも川に沈んだ泥のように胸に残り、ときどきふと思い出して「あれはどういうことだったのだろう?」などと思い巡らせながら長く楽しめる1冊。芥川賞も納得です。
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