『台所のおと』幸田文
最近の女流作家とは一味もふた味も違う、昭和の女流文学。短編集で、どれもおもしろかったけれど、特にすばらしかったのはタイトルにもなっている「台所のおと」。
細かく丁寧に描かれた何気ない日常のひとコマと、人間味のある登場人物。読んでいて背筋がしゃんと伸びるような、凛とした佇まいの作品です。お正月に読んだこともあって、細々とした台所仕事をしたくなりました。
で、あまりに気に入ったので、母に勧めてみたところ、「古くて辛気臭い」と一蹴されました。いわく、「おばあちゃん(母の母)の世代感丸出し」とのこと。
なるほど、私にとってはもう古典と言っても差し支えないほどの未知なる大正~昭和初期の生活も、母にとっては、姑世代が口にしたであろう「私たちが若かった頃は……」を思い出させる窮屈さを感じるのでしょうね。「古きよき日本」は、もしかしたら若い人の幻想なのかもしれないと思ったのでした。
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