「アンリ・カルティエ=ブレッソン 瞬間の記憶」を観ました。
モンマルトルの丘が見えるパリのアパルトマンの屋上で絵を描こうとして、「今日は日ざしが強いからやめる」と腰を上げるブレッソン。ルーブル美術館のヤン・ファン・エイク「宰相ニコラ・ロランの聖母子」を見て「計算しつくされている」とつぶやくブレッソン。しわくちゃの手で写真に小さくサインを入れるブレッソン。
93歳のアンリ・カルティエ=ブレッソンが穏やかに笑っている映像を見ながら、実に当たり前なのだけれど、あぁ、この人はつい最近までこの世に生きていたんだなぁと思いました。
ドキュメンタリーとしてはちょっと物足りなさも感じますが、サルトル、マティス、トルーマン・カポーティ、ココ・シャネル……偉大、というか偉大すぎてちょっと実感の湧かないような人たちの素の表情や撮影のエピソードはとても興味深く、まさに「秘話」。
また、ブレッソンの作品の中から、エリオット・アーウィットやイザベル・ユペールたちが選ぶマイベストが非常に面白い。なんでそれ選んだの?ともっと詳しく聞きたくなります。
私にはこんな写真は撮れないけれど、瞬間瞬間に芽生える感情だとかひらめきだとかそういうものを無視しないで、写真を撮るかのように、ちゃんと育てていきたいと思いました。
ちなみに、アンリ・カルティエ=ブレッソンのことをアメリカ人は「ブレッソン」と呼ぶけれど、フランス人は「カルティエ」と呼ぶそうです。イザベル・ユペールは、親しみを込めて「アンリ」と呼んでいました。